未払いや、不当な罰金、解雇、セクハラなどなど……
よくある質問を解説していきます。
今後も増やしていこうと思っています。
お店を辞めるとき、最低賃金にさせられました!
違法です。契約通りの時給でお給料を受け取れます。
「1か月前に辞めると言わなかった」、「客からクレームが来た」、だから「不正退店で最低賃金にする」と言ってくることがありますよね。「うちの店はそういうルール」、「面接で見せた店則に書いてある」「分かって入店したはずだ」と言われると、思わず「そうなのかな?」と思ってしまいます。最低賃金を支払うと言っているのだから、法律には違反しないのかなとも思っちゃいますよね。でもこれは違法なんです。
最低賃金は、お店のある場所ごとに国が決める最低時給です。東京では1,163円、神奈川は1,162円、埼玉は1,078円です(2024年10月1日現在)。たとえば東京で、時給1000円の契約は違法です。もし1000円で契約して働いても、時給1,163円以上に直してお給料を支払わないといけません(最低賃金法4条)。
では、それより高い時給で契約したときはどうでしょう。最低賃金分だけ払えばよいのでしょうか。そうではありません。最低賃金は契約の最低基準なので、最低賃金だけしか払わないのは契約違反です。例えば時給2,500円で入店させておいて、1,163円分だけしか払わないのは違法です。お店は契約通りの時給でお給料を計算して支払わないといけないのです。
お店の後出しは禁止です。労働契約を結ぶときに、お店が労働者に書面で伝えなければならない事項は法律で定められています。時給や仕事内容などはそのひとつです(労働基準法15条)。なので、どんな理由があっても働いた後に勝手に変更できません。
あなたが辞めたことでお店に損害があったらどうでしょうか。「急に辞められたら派遣を頼まないといけない」「売り上げが減ってしまう」「募集広告を出さないといけない」と言ってくるかもしれませんね。でも、そういった経営上のリスクは経営者が負うことで、従業員が気にすることではありません。お店がどんなに儲かってもお給料は増えないですよね。だからお店がどんなに損をしてもお給料を減らしてはいけません。そもそもお店は従業員にお給料の全額を支払わないといけない(労働基準法24条)ので、約束した金額から1円でも減らしてはいけません。
面接で「不正退店は最低賃金」と説明されていたり、そう書いてある契約書や誓約書にサインしていたらどうでしょう。最低賃金になってしまうのではと不安に思いますよね。しかしこれは契約自体が違法です。だいたい不正退店ってなんですかね。働くのも自由なら辞めるのも自由です。なのにお給料を「人質」にして働かせるのですから、これは強制労働の禁止に違反しています(労基法5条)。労働基準法以下の契約内容は、たとえ同意していてもその部分が無効になります。
お給料から「厚生費」や「ヘアメ代」、「送り代」などが引かれています!
違法です。天引きできるものは法律で決まっています。
給与明細を見るといきなり「控除」と書かれていたり、意味の分からない「引きもの」があることがありますよね。面接時に「引きものはこれとこれです」と説明されて、夜の世界はそんなものかと考えてしまいがちです。でもこれも違法です。
ダメです。お給料は「通貨」で「直接」、「全額」を「毎月一回以上、一定の期日を定めて」支払うのがお店の義務です(労働基準法24条)。ときどき振込手数料を引くお店もありますが、これも同じ理由で違法です。
法律上引いていいのは、基本的には「税」と「社会保険料」だけです。その他の控除として許されるのは、従業員の中で選挙を行い選ばれた従業員代表とお店が話し合って協定を結んだもののみです。そして使いみちとして許されているのは、明確に従業員本人に使った額だけです。
「所得税」と「住民税」です。これをお給料から正しく引くことは違法ではありません。でもその金額が問題です。
明細を見ると「税」とか「源泉税」の名目でお給料から引かれていることがありますよね。総支給額の10%というお店が多いようですが、20%なんてところもあります。所得があれば納税の義務がありますから、これは仕方ないなと思っていませんか?でも取られ過ぎていることも多いですよ。取られ過ぎている場合は正しい計算方法に直して差額を返すように求めることが出来ますよ。
1回の出勤ごとに1000円とか2000円とか引かれている謎のお金ですよね。これをお給料から引くには条件があります。まずは従業員の過半数が加盟する労働組合か、過半数代表との書面による協定があることです(労働基準法24条)。従業員代表は、協定の締結を予告して行った選挙で過半数の支持を得た従業員じゃないといけません(労働基準法施行規則6条)。ということで、職場に労働組合がない、従業員の過半数代表がいない、書面による協定がない、なのに厚生費を引いていた場合は違法です。
もし従業員の過半数代表が結んだ協定があったとしても、使い道が問題です。まず具体的で従業員のために使うものじゃないといけません。「旅行積立金」は参加しないなら返してもらえるし、「親睦会費」はほんとうにそんな会が存在するのかが問題です。「グラス代」や「備品費」などは経営者が負担するものですから、従業員から徴収するのは「不当利得」(民法704条)であり利息をつけて返してもらわなければなりません。「置き薬」「トイレットペーパー」「バックヤードでの飲料」などは金額が問題になります。だいたい1日で1000円もトイレットペーパーを使うわけがないので、これも返還対象です。
これは就業の条件になっているかどうかが問題です。ヘアメを使わないと働けないならヘアメ代は業務上必要な経費ですから代金はお店が負担するものです。だって会社で制服着用だったら制服代は会社持ちですよね。筆記用具が必要になったら領収証を出して経費精算しますよね。それと同じです。
そもそも交通費って会社がくれるものですよね。なんで交通費を従業員が払うんだってのがそもそも問題です。
だいたいお金をとって人を乗せて運転する場合には国土交通省の許可が必要です(道路運送法4条)。許可なく有料で人を乗せて運転する場合は、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金刑またはその両方が科されます。そのへんをちゃんとしてるのかが問題ですよね。
お店の車じゃなく運送業者の車で送られる場合もあります。その場合、送り代は使う人が運送業者に支払うものです。お店に支払っているならそもそも間違いです。この場合は、お店から全額を返金してもらい、送り業者と交渉することになります。
例外は、送ってもらったときの燃料代の負担です。実際にガソリン代はかかるので、その分をお店が貰うことは違法ではありません。でも、一回の送りで1000円は高い。ガソリン1L=150円で車は10km以上走ります。歌舞伎町から赤羽駅まで往復しても30kmなので、500円もかかりません。一人だけで送られることも少ないですよね。
お給料から引くなら先ほどの書面による協定が必要ですが、無いなら天引きするのは違法です。まずは全額を返金してもらい、燃料代相当分をお店と話し合って支払うことになります。
即日解雇にあったが、何も支払われなかった。
ちゃんとした理由のない解雇は無効です。
労働契約は、「お給料をもらう代わりに働く」と経営者と労働者が約束することです。お互いの約束ですから対等な立場で始まり、契約内容を変更するときも両者の合意です。でも、どうしてもこの約束を一方的に解除したいことがあります。
お店は辞めてほしくない、でも自分は辞めたい、ということがありますよね。こんなときはお店に「辞めます」と一方的に言えばいいです。お店が認めるかどうかは関係ありません。これを「退職」と言います。
労働者からの一方的な解約(退職)は自由です。どんな理由でも、理由を言わなくても辞められます。「1か月前申告」と店則にあっても、お店が引き留めても、完全月給制や有期雇用じゃなければ辞めると伝えてから2週間で契約は終了です(民法627条)。また、働いてみて労働条件が違った場合は即日辞めても大丈夫です。
ではその逆に、自分は辞めたくないけどお店から「辞めろ」と命令されたら従わないといけないんでしょうか。「辞めろ」とも言わないかもしれません。「もう来るな」「卒業です」「もう来なくていいよ」でも同じ。辞めなければいけないんでしょうか。
そんなことはありません。従業員が辞めたくないのに経営者が一方的に解約することを「解雇」と言いますが、解雇は自由ではありません。大事なことなのでもういちど。「退職」は自由ですが「解雇」は自由ではないのです。
解雇にはちゃんとした理由が必要です。たとえば主観的な理由で解雇することはできません。「使えないから」という理由は主観的ですから解雇できません。「店のカラーに合わない」も主観的だから解雇できません。「文句ばかり言う」も「同僚とうまくいってない」「クレームが多い」も証拠や改善のためのお店の努力がなければ解雇の理由になりません。
もし、ちゃんとした理由があって解雇したのだとしても、30日前の予告が必要で、お店は解雇予告手当を支払わなければなりません。
委託って何? 雇用って何?
委託→個人事業主として働くので「自由」はあるけど「保護」がない。
雇用→労働者として働くので、「自由」はないけど「保護」がある。
お店との契約が「委託」なのか「雇用」なのか、働いているときにそんなこと気にしないですよね。
「個人事業主」として仕事をするのが「委託」、「労働者」として仕事をするのが「雇用」です。
個人事業主は、自分が経営者だということです。
仕事をするのもしないのも自分で決められますが、法律上の保護を受けられません。
労働者は、経営者の命令を受けて仕事をします。
指示を断れず拘束されますが、法律上の保護を受けられます。
実はこれは大きな違いです。
★個人事業主(委託) | 「自由」はあるけど「保護」がない |
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★労働者(雇用) | 「自由」はないけど「保護」がある |
委託か雇用ってどう決まるの?
「委託(個人事業主扱い)」なのか「雇用(労働者扱い)」なのかは実際の働き方で決まります。
契約書に書いてあるから、入店時に言われたから、はまったく関係ありません。
国はその判断基準を出しているのですが、ちょっと分かりにくいので、水商売に当てはめてチェックリストを作ってみました。
YESが多ければ「労働者」、NOが多ければ「個人事業主」です。
さあどちらが多かったでしょうか。
この場合は「個人事業主」として委託で仕事をしています。 例えば、お店とは場所の貸し借りだけして、自分の指名客からの売り上げで報酬が決まる働き方の場合ですね。 こうやって自由に、自分のペースとやり方で働けるなら「個人事業主」として働くのもいいですよね。でもその場合、ほとんど法律の保護はありません。
この場合は「労働者」として雇用で仕事をしています。 例えば出勤日や時間を決められ、働いた時間でお給料のほとんどが決まっている。自由がないですね。 でも「労働者」は労働基準法などの法律に守られています。
例えばこんなことがあります。
問題は、実際は「YESが多い」のに「個人事業主」扱いされている場合です。
つまり「ニセ個人事業主」、「ニセ委託」になっていると、自由がないのに保護も受けられないのです。
さてみなさんはどうでしょうか。 これはケースバイケースなので、判断がつかないなと思った方は1度ご相談ください。
今回さいたま地裁で成立した和解は、キャストを労働者として扱わなかったお店が、裁判所の指摘を受けて労働者の権利を認めて和解金を支払ったものです。
本当は労働者なのに、委託扱いをされてませんか?
その場合、労働者として認めるようにお店と話し合う必要があります。
22時を過ぎてからも働いてるのに深夜割増がついてない!
深夜時間帯(22時から翌朝5時)に雇ってる人を働かせたら、お店は本来の時給に25%以上を割増して支払わなきゃいけません。
深夜割増はどんな仕事でもあります。
コンビニでも居酒屋でもキャバクラでもガールズバーでも同じです。
会社経営でも個人経営でも関係ありません!
経営者は割増賃金を支払う義務があります(労基法第37条 第4項)。
お店から「割増賃金を支払わない」と言われて、「そんなものかー」と納得してしまっていても後から請求できます。
なぜなら!労働基準法は労働条件の最低条件を決める法律なので、
最低基準以下のものは強制的に労働基準法の基準に直されるからです。
例えば「20時~25時、時給3,000円、週4日」で働いているとします。
割増なしだと…
1日:3,000円 x 5時間 = 15,000円
1週(4日):15,000円 x 4日 = 60,000円
1カ月(18日):15,000円 x 18日 = 270,000円
という感じですよね。
だけど、22時から25時までの3時間は深夜時間なので「割増賃金」があります。
割増の金額は
1日:3,000円 x 25% x 3時間 = 2,250円
1週(4日):2,250円 x 4日 = 9,000円
1カ月(18日):2,250円 x 18日 = 40,500円
です。
割増なしだと1カ月(18日)27万円。
法律通りに深夜割増がつくと31万500円なんです。
結構な違いですよね(´;ω;`)ウッ…
法律で支払う義務が決まっているのに、「夜職って分かってたでしょ?」、「もともと深夜時給込みの設定ですよ。」とか、こんな言い方でお店が割増賃金を払わないことがありますが、それもダメです。
辞めたいのに辞められない😢
辞めたい時は、自由に退職出来ます(※有期の場合は要注意)
従業員はいつでも自由に店を辞めることができます。
辞める理由を店に説明する必要も、店から許可をもらう必要もありません。
もし理由を聞かれても答えなくてよいですし、「一身上の都合」と言っても大丈夫です。
契約期間が決まっている場合でも、契約から1年を超えているなら理由は必要ありません。契約期間の途中で1年未満で退職するには、「やむを得ない事由」が必要です。たとえば心身を壊したり、あるいは家族の事情で働けないのは「やむを得ない」です。
給料の支払い条件や仕事の内容などが契約時・面接時の内容と違っていたりした場合はいつでも退職できます。もちろん、会社としっかり相談して、「円満退社」した方が気持ちがいいです。でも法律的には自由にやめて何にも問題ありません。
それでも会社が「退職は認めない」などと言ってくることはあります。そうやって引き止めてきても一方的に退職することができます。
ネットで探すとお金を取って代わりに退職手続きを進める「退職代行サービス」の宣伝を見ますが、そんなところに依頼する必要なんかまったくありません。
これでは怖くて辞められないですよね。でもこれは違法です。
働いた分のお給料は全額を支払う義務がお店にあります。労基法24条1項は「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と規定しています。「罰金」や「最低賃金への減額」も違法です。面接時に合意してしまっていても関係ありません。労基法16条は「使用者は労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償を予定する契約をしてはならない」としています。違法な契約条項は無効ですから、辞めるときの「罰金」や「最低賃金への減額」という契約は無効なのです。「最後の月のお給料がもらえなかった。」「ぜんぜん違う時給で計算されていた」なら、今からでも支払いを請求して取り返すことができます。
遅刻して、無欠して、風紀して、「罰金」(ペナルティ)を取られた
「罰金」が定められているのは違法です。
入店時の説明や店則などに「罰金」が定められているところって多いですよね。
例えば
など。
それに納得やサインをして入店したとしても、労働基準法第16条では「賠償予定の禁止」が定められています。労働者に罰金や違約金、損害賠償金の支払いを予定することは禁止されているのです。
そんなことはありません。そもそも労働基準法24条で「給料の全額払い」が義務付けられているからです。お給料から天引きをしていいのは、所得税、住民税、社会保険(雇用保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険)のみです。
誤ってお店のグラスを割ってしまったり、カーペットを汚してしまったりすることってありますよね。 従業員が業務中等に誤って会社の備品などを壊してしまった場合、会社に対して必ず全額弁償する必要があるかというとそうではありません。 なぜなら、労働者は会社の指揮監督に従って仕事に従事し、また会社は労働者を使用することによって利益を得ています。その為労働者を使用することによって発生した損失についても、勤務先の会社がこれを負担すべきとも考えられるからです。この考え方を「報償責任」といいます。この報償責任の考え方から、勤務先会社から、従業員に対する損害賠償請求については、一定の制限が課されることとなります。
お給料袋をあけたら給料明細の金額より少なく入っていたことはありませんか?
このパターン時々見受けられるのですが、お店は証拠を残さないためにしています。お給料を受け取る日は録音(証拠は大事です!!)をまわしてから受け取りましょう。すぐ開封して給料明細と金額があっているかチェックし、もし違っていたらお店の人に確認してくださいね。